鑑定眼
前代未聞!地積を2000倍に拡大した不正登記事件
㈱日本システム評価研究所 不動産鑑定士・(社)不動産証券化協会認定マスター・司法書士
山田 毅 2009.05.24



岐阜市の分譲住宅地「コモンヒルズ北山」の開発予定地内を巡り、開発業者が悪事を企んだ不正登記に土地家屋調査士、測量士が測量図や調査報告書を偽造などして加担し、管轄の岐阜地方法務局の首席登記官までがその事情知りながら黙認していたという前代未聞の事件が発生した。新聞報道等による事件の経緯・顛末はこうだ。

岐阜市内の「造成住宅団地コモンヒルズ北山」は、グリーン産業社長中村満の関連会社が97年頃、開発を始めた。しかし、計画区画780のうち約100区画しか売れず、計画が頓挫してしまった。
開発地には銀行の担保権設定がなされており、銀行から債権譲渡を受けた整理回収機構(RCC)が債権を引き継いだ。RCCによる物件差し押さえから競売という運びにななるわけだが、中村満は、RCCの担保権設定がなされた開発地内に無担保の土地を造り出し、分譲販売して売却益を得ようと考えた。
そこで開発予定地内にある無担保地約39㎡を約2000倍に拡大するため、土地家屋調査士、測量士に測量図等を偽造させて不正な地積更生登記を申請し、3万5940平方メートルに変更。さらに6万2220平方メートルまで地積を拡大した。
本来ならば地積更正登記は法務局が厳重に審査をし、隣接地権者の承諾が必要など厳格に制度運用されているのだが、本件では隣接地の所有者がグリーン産業の別の関連会社だったため、添付書面など形式上の不備がなく、法務局が更生登記をパスさせていた。その結果、RCCの担保地を侵食するように無担保地が拡大したため、周辺の土地の担保権者であるRCCがおかしいと気付き、法務局に異議を申し立てて登記を元に戻すことを要求した。当然ながら本件は事件へと発展し、中村満以下事件関係者が逮捕された。

名古屋地検特捜部の調べでは法務局の元登記官が不正な登記であることを知りながら自己保身の理由などから登記を認めていたとされ、名古屋地裁も本年の5月21日判決で、彼らの当時の上司も部下からこの件で相談を受けており、内容の虚偽性に認識があったとし、「不動産登記制度への信頼を損ねた組織ぐるみの職務犯罪で、強い非難に値する」と断罪。元岐阜地方法務局首席登記官に、「公電磁的記録不正作出・同供用罪」で懲役2年8月、執行猶予4年(求刑懲役3年)の有罪判決を言い渡した。

法務局の登記官がこれほどの偽装登記をなぜ黙認していたかについては、他サイトの情報では、開発業者中村満の登記を以前に却下した際、不服申し立てで苦労したので却下すれば面倒になると思ったとか、他にも不自然な登記を受理していたので断れなかった、といった事情があったという。
不動産表示登記のなかでも厳重に内容の真正さが求められている地積更生登記で約2000倍もの偽造申請が何故、可能だったのだろうか。隣接地所有者が関連会社で隣地承諾など形式的要件がクリアしやすかったうえ、登記を審査する立場の法務局の登記官が悪事をやっていると知りながら、彼らの保身から通さざるを得ないといったいくつかの事情が積み重なって前代未聞の不正登記がまかり通ってしまったのだが、現時点ではまだ明らかにされていないもっと深い闇があるのかもしれない。



シェア こ
のエントリーをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録